降りとけぬ君がゆきげの雫ゆゑ
袂にとけぬ氷しにけり
- 歌の意味
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降っても解けない雪のように打ち解けないあなたの、その訪れの雪解けの雫のために、私の袂には解けることのない氷ができてしまった。
- 鑑賞
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巻第十 恋歌二 676
詞書「兼輔朝臣に逢ひ始めて、常にしも逢はざりけるほどに」
打ち解けないあなたの訪れの雪解けの雫のせいで、袂には解けない氷ができてしまった、と詠んだ歌である。契りを結んだのに訪れのまれな男を恨み、流した涙が袂で凍ったと訴えている。
詞書によれば、藤原兼輔と契りを結び始めたものの、いつも逢えるわけではなかったころに詠んだ歌である。前歌までの藤原清正の歌に続き、その母の歌が置かれている。
作者の「きよただが母」は、藤原清正の母で、藤原兼輔の妻である。経歴は詳しく伝わらない。
初句「降りとけぬ」の「とけ」は、雪が「溶け」る意と、心が「解け」る意を掛けた掛詞で、降っても溶けない、打ち解けない、の意である。
二句「君がゆきげの」の「ゆきげ」は、雪解けの意の「雪気」と、あなたの訪れの意の「行き」を掛けた掛詞である。
三句「雫ゆゑ」は、その雫のために、の意で、涙のたとえである。
四句「袂にとけぬ」は、袂の上で溶けない、の意で、初句の「とけぬ」を繰り返して、打ち解けない心を重ねている。
結句「氷しにけり」は、氷となってしまった、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表している。
とく:雪が「溶く」意と、心が「解く」意を掛ける
ゆきげ:雪解けの意の「雪気」と、訪れの意の「行き」を掛ける
たもと:袖
- 作者
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清正の母
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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帰りけん空も知られず姨捨の 山より出でし月を見しまに
- 次の歌
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片時も見ねば恋しき君をおきて あやしや幾夜ほかに寝ぬらん