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帰りけん空も知られず姨捨の
山より出でし月を見しまに

歌の意味
どのようにして帰ったのか、その道の空さえもわからない。姨捨山から出た月を見ていた間に。
鑑賞
巻第十 恋歌二 675

詞書「女のもとより帰りて朝につかはしける」
 どう帰ったのか空もわからない、姨捨山から出た月を見ていた間に、と詠んだ歌である。女のもとから帰る道中、慰めがたい思いで月を眺めているうちに、我を忘れていた心を表している。
 詞書によれば、女のもとから帰った翌朝に送った歌である。古今和歌集の「わが心慰めかねつ更級や姨捨山に照る月を見て」を踏まえ、姨捨山の月に慰めがたい思いを託している。
 作者の源重光は、醍醐天皇の皇子である代明親王の子で、権大納言を務めた。

 初句「帰りけん」は、どのように帰ったのだろう、の意で、「けん」は過去の推量を表す。
 二句「空も知られず」は、空もわからない、の意で、ここで句切れとなる。「空」には、帰り道の方角や心の上の空の意を響かせている。
 三句「姨捨の」は、信濃の国の歌枕である姨捨山の、の意である。
 四句「山より出でし」は、山から出た、の意である。
 結句「月を見しまに」は、月を見ていた間に、の意で、初句から二句までと倒置の関係にある。

をばすてやま:信濃の国の山、月の名所で慰めがたい心を詠む歌枕
作者
源重光
出典
後撰和歌集
前の歌
今はてふ心つくばの山見れば 梢よりこそ色変はりけれ
次の歌
降りとけぬ君がゆきげの雫ゆゑ 袂にとけぬ氷しにけり