立ち寄らば影踏むばかり近けれど
誰かなこその関を据ゑけん
- 歌の意味
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立ち寄れば、お姿の影を踏むほどに近いのに、いったい誰が、来るなという名の勿来の関を据えたのだろう。
- 鑑賞
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巻第十 恋歌二 682
詞書「寛平の帝御髪下ろさせたまうてのころ、御帳のめぐりにのみ人はさぶらはせたまうて、近う寄せられざりければ、書きて御帳に結びつけける」
立ち寄れば影を踏むほど近いのに、誰が来るなという勿来の関を据えたのか、と詠んだ歌である。出家した宇多法皇のそば近くに寄れなくなった寂しさを、関所にたとえて訴えている。
詞書によれば、宇多天皇が出家されたころ、御帳台のまわりにだけ人を控えさせて近くに寄せられなかったので、書いて御帳台に結びつけた歌である。
作者の小八条御息所は、宇多天皇に仕えた御息所で、小八条と呼ばれた女性である。
初句「立ち寄らば」は、立ち寄ったなら、の意である。
二句「影踏むばかり」は、お姿の影を踏むほどに、の意である。
三句「近けれど」は、近いのに、の意で、ここで句切れとなる。
四句「誰かなこその」の「なこそ」は、陸奥の国の歌枕である「勿来」と、来るなの意の「な来そ」を掛けた掛詞である。「か」は疑問の係助詞である。
結句「関を据ゑけん」は、関所を据えたのだろう、の意で、四句の「か」を受けて連体形「けん」で結ぶ係り結びとなっている。
なこそ:陸奥の国の「勿来」の関と、来るなの意の「な来そ」を掛ける
みちやう:寝所などに垂らした帳、御帳台
みぐしおろす:髪を剃って出家する
- 作者
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小八条御息所
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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漁り火の夜はほのかに隠しつつ ありへばこひの下に消ぬべし
- 次の歌
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我が袖は名に立つ末の松山か 空より浪の越えぬ日はなし