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荒かりし波の心はつらけれど
すこしに寄せし声ぞ恋しき

歌の意味
荒々しかった波のようなあなたの心はつらいけれど、ほんの少し寄せてくれた声が恋しい。
鑑賞
巻第十一 恋歌三 747

詞書「人のもとにまかれりけるに、簾の外に据ゑて物言ひけるを、簾を引き上げければいたく騒ぎければ、まかり帰りて、又のあしたにつかはしける」
 荒かった波のような心はつらいが、少しばかり寄せてくれた声は恋しい、と詠んだ歌である。簾を上げて騒がれたことを荒波にたとえながら、わずかに交わした言葉への恋しさを訴えている。
 詞書によれば、ある女のもとを訪ねたところ、簾の外に座らされて話をしていたが、簾を引き上げたので女がひどく騒ぎ、そのまま帰って、翌朝に送った歌である。
 作者の藤原守正は、平安時代中期の人物で、経歴は詳しく伝わらない。

 初句「荒かりし」は、荒々しかった、の意である。
 二句「波の心は」は、波のような心は、の意で、女のひどく騒いだ様子を荒波にたとえている。
 三句「つらけれど」は、つらいけれど、の意である。
 四句「すこしに寄せし」は、少しばかり寄せた、の意で、「寄せ」は二句の「波」の縁語である。
 結句「声ぞ恋しき」は、声が恋しい、の意で、「ぞ」は強めの係助詞であり、連体形「恋しき」で結ぶ係り結びとなっている。

す:簾
作者
藤原守正
出典
後撰和歌集
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唐衣かけて頼まぬ時ぞなき 人のつまとは思ふものから
次の歌
いづ方に立ち隠れつつ見よとてか 思ひくまなく人のなりゆく