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津の国のなにはたたまく惜しみこそ
すくも焚く火の下に焦がるれ

歌の意味
津の国の難波ではないが、浮き名が立つことを惜しむからこそ、すくもを焚く火がくすぶるように、心の内でひそかに恋い焦がれているのだ。
鑑賞
巻第十一 恋歌三 769

詞書「題しらず」
 浮き名が立つのを惜しむからこそ、すくもを焚く火のように心の内で焦がれている、と詠んだ歌である。人に知られるのを恐れて思いを外に出さず、くすぶる火のように胸の内で燃える恋を述べている。
 作者の紀内親王は、桓武天皇の皇女である。

 初句「津の国の」は、摂津の国の、の意で、二句の「難波」を導いている。
 二句「なにはたたまく」の「なには」は、地名の「難波」と、「名には」を掛ける掛詞である。「たたまく」は、立つであろうこと、の意で、浮き名が立つことをいう。
 三句「惜しみこそ」は、惜しむからこそ、の意で、「こそ」は強めの係助詞である。
 四句「すくも焚く火の」は、すくもを焚く火の、の意で、くすぶって燃える火を、表に出せない恋にたとえている。「火」は「思ひ」の「ひ」を響かせている。
 結句「下に焦がるれ」は、心の内で恋い焦がれている、の意で、三句の「こそ」を受けて已然形「焦がるれ」で結ぶ係り結びとなっている。「焦がる」は四句の「火」の縁語である。

なには:地名の「難波」の意と、「名には」の意を掛ける
すくも:枯れた葦や萱、またそれを燃料にしたもの
こがる:焦げる、思い焦がれる
作者
紀内親王
出典
後撰和歌集
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