忘らるる身をうつせみの唐衣
返すはつらき心なりけり
- 歌の意味
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忘れられるのはむしろ私の方なのに、抜け殻のような唐衣を返してよこすとは、あなたこそつれない心であったのだ。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌四 804
詞書「返し」
忘れられる身なのに、抜け殻のような唐衣を返すとは、つれない心であったのだ、と詠んだ歌である。前歌で冷淡だと責められた男が、衣を返してくる相手の方こそ薄情だと切り返している。
前歌の第八百三首への返しである。前歌の「空蝉」「から」を受けて「うつせみの唐衣」と応じている。
作者の源巨城は、経歴の詳しいことが伝わらない人物である。
初句「忘らるる」は、忘れられる、の意で、「るる」は受身の助動詞「る」の連体形である。
二句「身をうつせみの」は、身であるのに、抜け殻のような、の意で、前歌の「空蝉」を受け、「うつせみ」にむなしいこの身の意を重ねている。
三句「唐衣」は、中国風の美しい衣で、ここでは返された装束を指している。本巻の第八百四十八首、第八百四十九首も三句に「唐衣」を置いている。
四句「返すはつらき」は、返してよこすのは薄情な、の意である。
結句「心なりけり」は、心であったのだ、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表す。
うつせみ:蝉の抜け殻。むなしいこの身の意を重ねる
からころも:中国風の美しい衣、衣服の美称
- 作者
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源巨城
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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今はとて梢にかかる空蝉の からを見むとは思はざりしを
- 次の歌
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影にだに見えもやするとたのみつる かひなく恋をます鏡かな