影にだに見えもやするとたのみつる
かひなく恋をます鏡かな
- 歌の意味
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せめて鏡に映る影にでもあなたの姿が見えるかと頼みにしていたのに、その甲斐もなく、恋しさを増すばかりの真澄の鏡であることよ。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌四 805
詞書「物言ひける女の、鏡を借りて返すとて」
せめて影にでも見えるかと頼みにしたのに、その甲斐もなく恋しさを増す鏡であることよ、と詠んだ歌である。借りた鏡に相手の姿を映し見たいと願いながら、かえって恋しさが募るばかりだったと嘆いている。
詞書によれば、言葉を交わしていた女から鏡を借り、それを返すときに添えた歌である。本巻の第八百三十三首も「影に見ゆる」を詠み、こちらは恋しい人の面影が見えることを詠んでいる。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「影にだに」は、映る姿にだけでも、の意で、「だに」は最小限の願いを表す副助詞である。
二句「見えもやすると」は、見えるだろうかと、の意で、「や」は疑問を表す。
三句「たのみつる」は、頼みにしていた、の意である。
四句「かひなく恋を」は、甲斐もなく恋しさを、の意である。
結句「ます鏡かな」は、「増す」と「真澄鏡」を掛け、恋しさを増すばかりの真澄の鏡であることよ、の意である。「かな」は詠嘆を表す。
かげ:鏡や水に映った姿
ますかがみ:よく澄んだ鏡の「真澄鏡」と、恋しさを「増す」意を掛ける
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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忘らるる身をうつせみの唐衣 返すはつらき心なりけり
- 次の歌
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あしひきの山田のそほづうちわびて ひとりかへるの音をぞなきぬる