あしひきの山田のそほづうちわびて
ひとりかへるの音をぞなきぬる
- 歌の意味
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山の田に立つかかしのように、ぽつんと立ちつくしてすっかり気落ちし、ひとり帰る私は、蛙が鳴くように声をあげて泣いてしまった。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌四 806
詞書「男の、物など言ひつかはしける女の田舎の家にまかりて、叩きけれども聞きつけずやありけん、門も開けずなりにければ、田のほとりに蛙の鳴きけるを聞きて」
山田のかかしのように気落ちして、ひとり帰る私は蛙のように声をあげて泣いた、と詠んだ歌である。門を開けてもらえず立ちつくす自分を田のかかしに、帰り道の泣き声を蛙の声に重ね、みじめさをおかしみも交えて詠んでいる。
詞書によれば、男が言葉を送っていた女の田舎の家を訪ね、門を叩いたが聞きつけなかったのか開けてもらえず、田のほとりで蛙の鳴くのを聞いて詠んだ歌である。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「あしひきの」は、「山」にかかる枕詞である。
二句「山田のそほづ」は、山の田に立つかかしの、の意で、門の外に立ちつくす自分の姿をたとえている。
三句「うちわびて」は、すっかり気落ちして、の意で、「うち」は語調を整える接頭語である。
四句「ひとりかへるの」は、ひとり帰る、の意で、「帰る」に田で鳴く「蛙」を掛けている。
結句「音をぞなきぬる」は、声をあげて泣いてしまった、の意で、「なく」に蛙が「鳴く」と自分が「泣く」を掛けている。「ぞ」は強めの係助詞で、連体形「ぬる」で結ぶ係り結びとなっている。
そほづ:田に立てるかかし
うちわぶ:すっかり気落ちする
かへる:「帰る」と「蛙」を掛ける
なく:蛙が「鳴く」と、自分が「泣く」を掛ける
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
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影にだに見えもやするとたのみつる かひなく恋をます鏡かな
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種はあれど逢ふことかたき岩の上の まつにて年をふるはかひなし