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種はあれど逢ふことかたき岩の上の
まつにて年をふるはかひなし

歌の意味
種はあるけれども、逢うことの難しい、堅い岩の上の松のように、ただ待ち続けて年を過ごすのは甲斐のないことだ。
鑑賞
巻第十二 恋歌四 807

詞書「文つかはしける女の母の、恋をし恋ひばと言へりけるが、年頃経にければつかはしける」
 種はあっても逢うことの難しい岩の上の松のように、待って年を過ごすのは甲斐がない、と詠んだ歌である。娘の母に励まされて待ち続けたものの、いっこうに逢えないまま年月がたったことを訴えている。
 詞書によれば、手紙を送っていた女の母が「恋をし恋ひば」と言ったが、そのまま何年もたってしまったので送った歌である。母の言葉は古今和歌集恋一のよみ人しらずの歌「種しあれば岩にも松は生ひにけり恋をし恋ひばあはざらめやも」の下の句を引いたもので、本歌はその上の句の「種」「岩」「松」を用いて応じている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「種はあれど」は、種はあるけれども、の意で、古今和歌集の歌の「種しあれば」を踏まえている。
 二句「逢ふことかたき」は、逢うことが難しい、の意で、「かたき」に、逢うことが「難き」意と、岩が「堅き」意を掛けている。
 三句「岩の上の」は、岩の上に生える、の意で、六音の字余りとなっている。
 四句「まつにて年を」は、松として年を、の意で、「まつ」に「松」と「待つ」を掛けている。本巻の第八百十六首、第八百六十四首、第八百五十一首も「まつ」に「待つ」を掛けている。
 結句「ふるは甲斐なし」は、過ごすのは甲斐がない、の意で、本歌の「あはざらめやも」の励ましに対し、むなしさを訴えて結んでいる。

かたき:逢うことが「難き」意と、岩の「堅き」意を掛ける
まつ:「松」と「待つ」を掛ける
ふ:年月が過ぎる、時を過ごす
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
あしひきの山田のそほづうちわびて ひとりかへるの音をぞなきぬる
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ひたすらに厭ひ果てぬるものならば 吉野の山に行方知られじ