涙をも忍ぶる頃の我が袖に
あやなく月の宿りぬるかな
- 歌の意味
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涙さえも人目を忍んで隠しているこの頃の私の袖に、わけもなく月が宿って映ってしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 824
詞書「月前恋といへる心を」
「月前恋」、すなわち月を前にした恋という題で詠んだ歌である。涙さえ忍んでいるこの頃の私の袖に、わけもなく月が宿ったことだ、と詠む。人目を忍んで涙を隠しているのに、袖を濡らす涙に月の光が映って、かえって涙がそこにあることを示してしまうという趣向で、隠しきれない忍ぶ恋を表している。
作者は「よみ人しらず」で、名は伝わらない。
前歌の草枕の露に続き、本歌は袖の涙に宿る月を詠み、涙を隠そうとしても露や月によってあらわになってしまう恋の歌が並んでいる。
初句「涙をも」の「も」は、恋心だけでなく涙さえも、の意である。
二句「忍ぶる頃の」の「忍ぶ」は人目を避けて隠す意で、隠しているこの頃の、の意である。
三句「我が袖に」は、涙に濡れた私の袖に、の意である。
四句「あやなく月の」の「あやなく」は、わけもなく、筋の通らないことに、の意で、隠しているのに月が宿ってしまうことへの恨みを込める。
結句「宿りぬるかな」の「宿る」は光が映る意、「ぬる」は完了の助動詞「ぬ」の連体形、「かな」は詠嘆の終助詞で、映ってしまったことだ、の意である。
やどる:光が映る
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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おきてゆく涙のかかる草枕 露しげしとや人のあやめん
- 次の歌
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忍びかね今は我とや名のらまし 思ひ捨つべき気色ならねば