言はで思ふ心ありその浜風に
立つ白浪のよるぞわびしき
- 歌の意味
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口に出さずに思う心がある。荒磯の浜風に立つ白波が寄せるように、夜が来るのがつらいことだ。
- 鑑賞
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巻第十 恋歌二 689
詞書「人を思ひかけて心地もあらずやありけん、物も言はずして、日暮るれば起きも上がらずと聞きて、この思ひかけたる女のもとより、などかくすきずきしくはと言ひて侍りければ」
口に出さずに思う心があり、荒磯の浜風に立つ白波が寄るように、夜が来るのがつらい、と詠んだ歌である。恋わずらいを好色と冷やかされたのに対し、口に出せない思いに夜ごと苦しんでいると訴えている。
詞書によれば、ある女を思って正気もなくなったのか、物も言わず、日が暮れると起き上がりもしないと聞いた、その思いをかけられた女のもとから、どうしてそんなに好色めいているのかと言ってきたので詠んだ歌である。本巻の第六百三十六首も「言はで物思ふ」と詠んでいる。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「言はで思ふ」は、口に出さずに思う、の意である。本巻の第六百三十六首の四句「言はで物思ふ」と同じ趣向である。
二句「心ありその」の「ありそ」は、心が「あり」の意と、荒い磯の意の「荒磯」を掛けた掛詞である。
三句「浜風に」は、浜辺を吹く風に、の意である。
四句「立つ白浪の」は、立つ白波の、の意で、二句から四句までが結句の「よる」を導いている。
結句「よるぞわびしき」の「よる」は、波が「寄る」意と、「夜」を掛けた掛詞である。「ぞ」は強めの係助詞で、連体形「わびしき」で結ぶ係り結びとなっている。
ありそ:荒い磯、「あり」を掛ける
よる:波が「寄る」意と、「夜」を掛ける
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
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人妻に心あやなくかけはしの 危ふき道は恋にぞありける
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ひとりのみ恋ふれば苦し呼子鳥 声に鳴き出でて君に聞かせん