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ひとりのみ恋ふれば苦し呼子鳥
声に鳴き出でて君に聞かせん

歌の意味
ひとりだけで恋い慕っていると苦しい。呼子鳥のように声に出して鳴いて、あなたに聞かせよう。
鑑賞
巻第十 恋歌二 690

詞書「心かけて侍りけれど、言ひつかん方もなく、つれなきさまの見えければつかはしける」
 ひとりで恋い慕うのは苦しい、呼子鳥のように声に出して鳴いてあなたに聞かせよう、と詠んだ歌である。言い寄るすべもなくつれない相手に、もう黙っていられず思いを打ち明けようとする心を表している。
 詞書によれば、思いをかけていたが、言い寄るすべもなく、相手がつれない様子に見えたので送った歌である。本巻の第六百二首も初句を「ひとりのみ」、二句を「思へば苦し」としており、上の句がよく似ている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「ひとりのみ」は、自分ひとりだけで、の意である。本巻の第六百二首の初句と同じ言葉である。
 二句「恋ふれば苦し」は、恋い慕っていると苦しい、の意で、ここで句切れとなる。
 三句「呼子鳥」は、人を呼ぶように鳴くとされた鳥で、四句の「鳴き出で」を導いている。
 四句「声に鳴き出でて」は、声に出して鳴いて、の意で、思いを口に出すことを呼子鳥の声に重ねている。
 結句「君に聞かせん」は、あなたに聞かせよう、の意で、「ん」は意志を表す。

よぶこどり:人を呼ぶように鳴くとされた鳥
いひつく:言い寄る、思いを伝える
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
言はで思ふ心ありその浜風に 立つ白浪のよるぞわびしき
次の歌
ふしなくて君が絶えにし白糸は よりつきがたき物にぞありける