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君をのみ思ひかけごの玉くしげ
明け立つごとに恋ひぬ日はなし

歌の意味
あなたのことばかりを思いかけて、懸子のある玉くしげを開けるように、夜が明けるたびに、恋しく思わない日はない。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 697

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 あなたばかりを思いかけ、懸子のついた玉くしげを開けるように、夜が明けるたびに恋しく思わない日はないと詠む歌である。「かけご」に「思ひかけ」と、箱の中にはめこむ「懸子」を掛け、玉くしげを「開け」ることから夜が「明け」ることへと続けて、毎朝絶えることのない恋しさを表している。前歌の第六百九十六首と同じく「玉くしげ」を「明け」の枕詞として用いている。
 本巻の巻末の歌である。巻頭の第六百二十一首が人知れず恋を「思ひそめしか」と恋の始まりを詠んだのに対し、この歌は明けるたびに恋しく思わない日はないと絶えることのない恋しさを詠み、恋の始まりと日ごとに続く恋とで、巻の始めと終わりが呼応している。

 初句「君をのみ」は、あなたばかりを、の意である。
 二句「思ひかけごの」は、「かけご」が「思ひかけ」の「かけ」と、箱の中にはめこむ小箱の「懸子」を掛ける掛詞である。
 三句「玉くしげ」は、櫛を入れる箱の美称で、「明け」にかかる枕詞である。前歌の第六百九十六首の三句と同じ語である。
 四句「明け立つごとに」は、夜が明けるたびに、の意で、玉くしげを「開け」ることを響かせている。
 結句「恋ひぬ日はなし」は、恋しく思わない日はない、の意で、第六百六十四首の結句「かけぬ日はなし」と同じ形で結んでいる。巻頭の第六百二十一首の結句「思ひそめしか」の恋の始まりに対し、日ごとの恋しさで巻を閉じている。

かけご:「思ひかけ」の意と、箱の中にはめこむ小箱の「懸子」を掛ける
たまくしげ:玉櫛笥。櫛を入れる箱の美称。「明く」にかかる枕詞
あけたつ:明け立つ。夜が明ける
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
恋ひつつも今日はありなん玉くしげ 明けん朝をいかで暮らさむ
次の歌
春の野に生ふるなきなのわびしきは 身をつみてだに人の知らぬよ