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別るればまづ涙こそ先に立て
いかで後るる袖の濡るらん

歌の意味
別れの時には、まず涙こそが人より先に立って行くのに、どうしてあとに残される私の袖が濡れるのだろう。
鑑賞
巻第六 別歌 324

詞書「題しらず」
 別れの時には涙こそが真っ先に立って出て行くのに、どうして後に残される袖が濡れるのだろうと詠む歌である。涙が「先に立つ」と「後るる」袖とを対比させた理屈の機知により、見送る者の止めどない涙を表している。

 初句「別るれば」は、別れる時には、の意で、已然形に「ば」がついて、そうなるといつも、の意を表す。本巻の第三百二十首の初句と同じ句である。
 二句「まづ涙こそ」は、まず涙が、の意で、係助詞「こそ」による強調である。前歌の「まづは露けき」を受けている。
 三句「先に立て」は、先に立って出て行くのに、の意で、係助詞「こそ」を受けて已然形「立て」で結び、逆接で下の句に続いている。
 四句「いかで後るる」は、どうしてあとに残される、の意である。三句の「先に立つ」と「後るる」とが対をなしている。前歌の四句と同じく「後るる袖」を詠んでいる。
 結句「袖の濡るらん」は、袖が濡れるのだろうか、の意で、「らん」は原因を推量する助動詞である。

おくる:あとに残される。先立たれる
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
東路の草葉を分けん人よりも 後るる袖ぞまづは露けき
次の歌
別るるををしとぞ思ふ剣羽の 身をより砕く心地のみして