古典和歌stream

流れてと何頼むらん涙川
影見ゆべくも思ほえなくに

歌の意味
時がたてばと、何を頼みにしているのだろう。涙川にあなたの姿が映って見えるとも思われないのに。
鑑賞
巻第十 恋歌二 657

詞書「返し」
 時がたてばと何を頼みにしているのか、涙川にあなたの姿が映るとも思われないのに、と詠んだ歌である。前歌の訴えに対し、あなたの真心など見えないと、冷ややかに突き放している。
 前歌の第六百五十六首に対する返しで、前歌の「流れて」「頼む」「涙川」をそのまま受けて切り返している。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「流れてと」は、時が流れたならと、の意で、前歌の四句「流れて」を受けている。
 二句「何頼むらん」は、何を頼みにしているのだろう、の意で、ここで句切れとなる。前歌の結句「頼む心は」を受けている。
 三句「涙川」は、流れる涙を川にたとえた語で、前歌の三句を受けている。
 四句「影見ゆべくも」は、水面にあなたの姿が映って見えるとも、の意で、相手の真心が見えることのたとえである。
 結句「思ほえなくに」は、思われないのに、の意である。

かげ:水に映る姿
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
つらしとも思ひぞ果てぬ涙川 流れて人を頼む心は
次の歌
何事を今は頼まんちはやぶる 神も助けぬ我が身なりけり