古典和歌stream

何事を今は頼まんちはやぶる
神も助けぬ我が身なりけり

歌の意味
今となっては何を頼みにしたらよいのだろう。神さえも助けてくれない我が身であったよ。
鑑賞
巻第十 恋歌二 658

詞書「人を言ひわづらひてつかはしける」
 今は何を頼みにすればよいのか、神さえ助けてくれない我が身だった、と詠んだ歌である。言い寄ってもなびかない相手への思いが、神に祈ってもかなわない絶望を表している。
 詞書によれば、ある人に言い寄りかねて送った歌である。次歌の第六百五十九首はおほつぶねの返しである。
 作者の平定文は、平好風の子で、左兵衛佐などを務めた。平中と呼ばれた恋の名手で、『平中物語』の主人公として知られる。

 初句「何事を」は、何を、の意である。
 二句「今は頼まん」は、今となっては頼みにしたらよいのだろう、の意で、ここで句切れとなる。
 三句「ちはやぶる」は、「神」にかかる枕詞である。次歌の第六百五十九首も初句に「ちはやぶる」を置いて応じている。
 四句「神も助けぬ」は、神さえも助けてくれない、の意である。
 結句「我が身なりけり」は、我が身であったよ、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表している。

いひわづらふ:言い寄りかねる、思いを伝えあぐむ
作者
平定文
出典
後撰和歌集
前の歌
流れてと何頼むらん涙川 影見ゆべくも思ほえなくに
次の歌
ちはやぶる神も耳こそ馴れぬらし さまざま祈る年も経ぬれば