桜花みかさの山の陰しあれば
雪と降れども濡れじとぞ思ふ
- 歌の意味
-
桜の花が雪のように降りかかっても、御笠という名を持つ三笠山の陰にいるのだから、濡れることはあるまいと思う。
- 鑑賞
-
巻第十六 雑春歌 1056
詞書「題しらず」
桜の花が雪のように散りかかっても、御笠という名の三笠山の陰にいるのだから、濡れることはあるまいと詠む歌である。地名の「三笠」に「御笠」を掛け、山の陰を笠に見立てて、散る花を雪に、その陰を雨宿りの笠にたとえる機知の歌である。落花を雪に見立てる趣向は、本巻の第千五十一首とも通じている。
初句「桜花」は、桜の花が、の意である。
二句「みかさの山の」は、三笠山の、の意で、「みかさ」は奈良の「三笠」山と、「御笠」を掛ける掛詞である。
三句「陰しあれば」は、陰があるので、の意で、「し」は強めの副助詞、「ば」は已然形について原因を表す。
四句「雪と降れども」は、雪のように降っても、の意で、散る花を雪に見立てている。本巻の第千五十一首の四句「消えせぬ雪と」と、花を雪に見立てる点で通じている。
結句「濡れじとぞ思ふ」は、濡れることはあるまいと思う、の意で、「じ」は打消推量の助動詞、係助詞「ぞ」を受けて連体形の「思ふ」で結ぶ係り結びである。
みかさ:奈良の「三笠」山と、「御笠」を掛ける
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
殿守のとものみやつこ心あらば この春ばかり朝清めすな
- 次の歌
-
年ごとに春のながめはせしかども 身さへふるとも思はざりしを