春霞たちながら見し花ゆゑに
ふみとめてけるあとの悔しさ
- 歌の意味
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春霞が立つなか、立ったまま見とれていた花のために、その場に足を止め、あなたの文もそのままにしてしまった、その後の悔しさよ。
- 鑑賞
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巻第三 春歌下 99
詞書「春花見に出でたりけるに、文をつかはしたりける、その返事もなかりければ、明くる朝昨日の返事と乞ひにまうで来たりければ、言ひつかはしたりける」
花に見とれて足を止めているうちに、届いた手紙に返事もしないままになってしまった悔しさを詠んだ歌である。「たち」「ふみ」「あと」に二つの意を重ね、返事の遅れを花のせいにして詫びている。
詞書によれば、春に花見に出かけていたときに手紙が届いたが返事をしなかったので、翌朝、昨日の返事をもらいたいと先方から使いが来たため、言い送ったものである。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「春霞」は、二句の「たち」を導いている。本巻の第百十二首、第百十三首にも春霞と「たつ」が取り合わされている。
二句「たちながら見し」の「たち」は、霞が「立ち」と、立ったままの「立ち」を掛けた掛詞である。
三句「花ゆゑに」は、花のために、の意で、返事が遅れた理由を花に帰している。
四句「ふみとめてける」の「ふみ」は、足を「踏み」とどめる意と、手紙の「文」を掛けた掛詞で、文をとどめたままにしたことを表す。
結句「あとの悔しさ」の「あと」は、足跡の「跡」と、のちの意の「後」を掛けた掛詞で、「踏み」の縁語である。体言止めで悔いを言い切っている。
たつ:霞が「立つ」意と、立ったままでいる意の「立つ」を掛ける
ふみ:足を「踏み」とどめる意と、手紙の「文」を掛ける
あと:足跡の「跡」と、のちの意の「後」を掛ける
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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春来れば咲くてふことを濡れ衣に 着するばかりの花にぞありける
- 次の歌
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春日さす藤のうら葉のうらとけて 君し思はば我も頼まん