古典和歌stream

下紅葉するをば知らで松の木の
上の緑を頼みけるかな

歌の意味
下葉が紅葉して色変わりしているのを知らないで、松の木の上の変わらない緑を頼みにしていたことよ。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 844

詞書は前の歌に続き「女の許につかはしける」
 下葉が紅葉していることも知らずに、松の木の上の変わらぬ緑を頼みにしていたと詠む歌である。詞書から、女のもとに贈った歌とわかる。常緑の松を変わらぬ心のたとえとし、見えない下葉では心変わりが進んでいたことに気づかず、うわべの変わらなさを信じていた嘆きを詠んでいる。

 初句「下紅葉」は、下葉が紅葉すること、の意で、人目につかないところでの心変わりを重ねている。第八百三十八首と第八百四十首の「下葉」と同じく、下葉の色変わりを詠んでいる。
 二句「するをば知らで」は、しているのを知らないで、の意である。
 三句「松の木の」は、松の木の、の意である。松は常緑で、変わらぬ心のたとえとなる。
 四句「上の緑を」は、上の緑を、の意で、初句の「下」と対をなしている。
 結句「頼みけるかな」は、頼みにしていたことよ、の意で、「ける」は気づきの詠嘆を表す。

したもみぢ:下紅葉。木の下の方の葉が紅葉すること
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
数ならぬ身をうち河の網代木に 多くのひをも過ぐしつるかな
次の歌
我が背子を我が恋ひ居れば我が宿の 草さへ思ひうらがれにけり