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我が背子を我が恋ひ居れば我が宿の
草さへ思ひうらがれにけり

歌の意味
私が夫を恋い慕っていると、我が家の庭の草までも、物思いをして葉先が枯れてしまったことよ。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 845

詞書は前の歌に続き「女の許につかはしける」
 私が夫を恋い慕っていると、我が家の庭の草までも思い悩んで枯れてしまったと詠む歌である。秋の末に葉先から枯れていく草に、恋に悩みしおれていく自分の心を重ねている。
 作者の「人麿」は柿本人麻呂である。飛鳥時代の宮廷歌人で、万葉集を代表する歌人として歌聖と仰がれ、三十六歌仙に数えられる。拾遺和歌集には、万葉集の歌が人麻呂の作として多く収められている。
 万葉集巻十に類歌が収められている。

 初句「我が背子を」は、私の夫を、の意である。第八百十八首と第八百十九首の初句と同じ句である。
 二句「我が恋ひ居れば」は、私が恋い慕っていると、の意である。初句の「我が」と同じ語を重ねている。
 三句「我が宿の」は、我が家の庭の、の意で、「我が」を三度重ね、調べを整えている。
 四句「草さへ思ひ」は、草までも思い悩んで、の意で、「さへ」は添加を表す。
 結句「うらがれにけり」は、「うら」が草木の葉先の「末」と、心の意の「うら」を掛ける掛詞で、葉先が枯れる意と、心がしおれる意を重ねている。前の第八百四十一首の「かれにけり」と、枯れることを共有している。

うらがる:「末」が枯れる意と、心の意の「うら」がしおれる意を掛ける
作者
柿本人麻呂
出典
拾遺和歌集
前の歌
下紅葉するをば知らで松の木の 上の緑を頼みけるかな
次の歌
霜の上に降る初雪の朝氷 とけずも物を思ふころかな