思はむと頼めし事もあるものを
なき名を立ててただに忘れね
- 歌の意味
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いつまでも思おうと頼みにさせた約束もあるのに。ありもしない評判を口実にして、いっそあっさりと忘れてしまえばよい。
- 鑑賞
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巻第十 恋歌二 662
詞書「男のもとより、今は異人あんなればと言へりければ、女に代はりて」
いつまでも思おうと頼ませた約束もあるのに、ありもしない評判を口実にして、あっさり忘れてしまえばよい、と詠んだ歌である。ほかに男がいるようだと言ってきた男に、約束を破る口実だろうと皮肉を込めて応じている。
詞書によれば、男のもとから、今はほかに男がいるようだからと言ってきたので、女に代わって詠んだ歌である。次歌の第六百六十三首は男の返しである。本巻の第六百六十五首も初句と二句を「思はんと頼めし」とし、頼ませた約束が破られた嘆きを詠んでいる。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「思はむと」は、いつまでも思おうと、の意である。
二句「頼めし事も」は、頼みにさせた約束も、の意である。本巻の第六百十八首、第六百六十五首にも「頼めし」の語が見える。
三句「あるものを」は、あるというのに、の意で、ここで句切れとなる。
四句「なき名を立てて」は、ありもしない評判を立てて、の意である。次歌の第六百六十三首はこの「なき名」を取って切り返している。
結句「ただに忘れね」は、いっそあっさり忘れてしまえ、の意で、「ね」は完了の助動詞「ぬ」の命令形である。
なきな:根も葉もないうわさ、身に覚えのない評判
たのむ:頼みにさせる、約束する
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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住吉の松に立ち寄る白浪の かへる折にや音は泣かるらむ
- 次の歌
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春日野の飛火の野守見しものを なき名と言はば罪もこそ得れ