春日野の飛火の野守見しものを
なき名と言はば罪もこそ得れ
- 歌の意味
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春日野の飛火の野守がちゃんと見ていたのに、根も葉もない評判だと言うのなら、かえって罪を得ることになるだろう。
- 鑑賞
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巻第十 恋歌二 663
詞書「返し」
春日野の飛火の野守が見ていたのに、根も葉もない評判だと言うならかえって罪を得る、と詠んだ歌である。前歌がうわさを根拠のないものとしたのに対し、見ていた者がいるのだと言い返している。
前歌の第六百六十二首に対する返しで、前歌の「なき名」を受けて切り返している。古今和歌集の「春日野の飛火の野守出でて見よ今幾日ありて若菜摘みてん」を踏まえ、飛火の野守を見張りの者として詠んでいる。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「春日野の」は、大和の国の歌枕である春日野の、の意である。
二句「飛火の野守」は、春日野の飛火野の番人で、もとは烽火台の番人をいう。ここでは二人の仲を見ていた者のたとえである。
三句「見しものを」は、見ていたのに、の意で、ここで句切れとなる。
四句「なき名と言はば」は、根も葉もない評判だと言うなら、の意で、前歌の四句「なき名を立てて」を受けている。
結句「罪もこそ得れ」は、罪を得ることにもなるだろう、の意で、「こそ」は強めの係助詞、「う」の已然形「得れ」で結ぶ係り結びとなっている。
とぶひ:烽火台、春日野の飛火野
のもり:野の番人
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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思はむと頼めし事もあるものを なき名を立ててただに忘れね
- 次の歌
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忘られて思ふなげきの茂るをや 身をはづかしの森といふらん