蒲生野のたまのを山に住む鶴の
千年は君が御代の数なり
- 歌の意味
-
蒲生野の玉の緒山に住む鶴の千年という寿命は、そのままわが君の御代の年数である。
- 鑑賞
-
巻第五 賀歌 265
詞書「仁和の御時大嘗会の歌」
蒲生野の玉の緒山に住む鶴の千年の齢を、そのまま天皇の御代の年数として祝う歌である。長寿の象徴である鶴に、山の名の「玉の緒」すなわち命の意を重ね、御代の長久を言祝いでいる。詞書によれば、光孝天皇の仁和の御代の大嘗会の歌である。大嘗会の歌は、その折に選ばれた国の地名を詠み込むのが習いで、この歌は近江国の蒲生野を詠み込んでいる。
初句「蒲生野の」は、近江国の蒲生野の、の意である。
二句「たまのを山に」は、山の名に、命を表す「玉の緒」を掛けている。山の名から鶴の千年の命へと導いている。
三句「住む鶴の」は、住む鶴の、の意で、鶴は千年を生きるとされた長寿の鳥である。本巻の第二百八十四首、第二百九十八首にも鶴が詠まれる。
四句「千年は君が」は、鶴の千年の寿命は、わが君の、の意である。
結句「御代の数なり」は、御代の年数である、の意で、鶴の齢をそのまま御代の長さと言い切っている。
たまのを:命の意と、山の名とを掛ける
だいじやうゑ:天皇が即位後初めて行う新嘗祭。大嘗会
みよ:天皇の治世
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
ちはやぶる平野の松の枝しげみ 千代も八千代も色は変はらじ
- 次の歌
-
朝まだききりふの岡にたつ雉は 千代のひつぎの始めなりけり