朝まだききりふの岡にたつ雉は
千代のひつぎの始めなりけり
- 歌の意味
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夜明け前の霧の立つ桐生の岡に立つ雉は、千代に続く日嗣の御子の、その日を重ねていく始まりであったのだ。
- 鑑賞
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巻第五 賀歌 266
詞書「贈皇后宮の御産屋の七夜に、兵部卿致平の親王の雉の形を作りて、誰ともなくて歌をつけて侍りける」
夜明け前の霧の立つ桐生の岡に雉が立つ光景に寄せて、千代に続く皇統の始まりを祝う歌である。詞書によれば、贈皇后宮の御産屋の七夜の祝いに、兵部卿致平親王が雉の形の作り物を贈り、誰からとも知らせずに添えた歌である。作り物の雉に寄せて、生まれた御子が皇位を継ぐ日嗣となることを言祝いでおり、作者が親王に代わって詠んだものと見られる。贈皇后宮が誰を指すかについては、冷泉天皇の女御で花山天皇の母である藤原懐子とする説などがある。
作者の「清原元輔」は、清原深養父の孫で、梨壺の五人の一人として後撰和歌集の撰進と万葉集の訓読に携わった。清少納言の父で、三十六歌仙に数えられる。
初句「朝まだき」は、夜がまだ明けきらない早朝、の意で、二句の「霧」を導いている。
二句「きりふの岡に」は、地名の桐生の岡に、朝霧の「霧」を掛けている。
三句「たつ雉は」は、雉が立つ意と、霧が立つ意とを「たつ」に掛けている。
四句「千代のひつぎの」は、皇位を継ぐ意の「日嗣」と、日を継いで重ねる意とを掛け、七夜という日数の祝いと、皇位を継ぐ御子の誕生とを重ねている。
結句「始めなりけり」は、始まりであったのだ、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表す。巻頭の第二百六十三首の「万代の始め」、第二百八十九首の「千代の始め」と同じく、長い御代の始まりを言祝いでいる。
きりふ:地名の桐生と、朝霧の霧とを掛ける
たつ:雉が立つ意と、霧が立つ意とを掛ける
ひつぎ:皇位を継ぐ意の日嗣と、日を継ぐ意とを掛ける
うぶや:出産のための産室。また誕生後に行う祝い
しちや:子の誕生から七日目の夜の祝い
- 作者
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清原元輔
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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蒲生野のたまのを山に住む鶴の 千年は君が御代の数なり
- 次の歌
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二葉より頼もしきかな春日山 木高き松の種ぞと思へば