古典和歌stream

春風は花のなき間に吹きはてね
咲きなば思ひなくて見るべく

歌の意味
春風は、花がまだない間に吹き尽くしてしまえ。花が咲いたならば、散る心配もなく見ることができるように。
鑑賞
巻第十六 雑春歌 1035

詞書「題しらず」
 春風は花の咲かない今のうちに吹き尽くしてしまえ、花が咲いたら散る心配もなく見られるようにと詠む歌である。花を散らす風を恐れる心から、咲く前に風が吹き尽くしてしまうことを願う、花を惜しむ思いの深さを表している。前歌の第千三十四首に続き、まだ咲かない花を前にした心を詠んでいる。

 初句「春風は」は、春風は、の意である。
 二句「花のなき間に」は、花がまだない間に、の意で、前歌の第千三十四首の四句「まだ咲かぬ間は」と、「間」の語を共有している。
 三句「吹きはてね」は、吹き尽くしてしまえ、の意で、「ね」は完了の助動詞「ぬ」の命令形である。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「咲きなば思ひ」は、咲いたならば心配が、の意で、「な」は完了の助動詞「ぬ」の未然形、「ば」は仮定を表す。
 結句「なくて見るべく」は、なくて見ることができるように、の意で、「べく」は可能の助動詞「べし」の連用形である。三句の願いの目的を下の句で添えている。

ふきはつ:吹き果つ。吹き尽くす
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
かきくらし雪も降らなん桜花 まだ咲かぬ間はよそへても見む
次の歌
咲かざらむ物とはなしに桜花 面影にのみまだき見ゆらん