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花だにもまだ咲かなくに鴬の
鳴く一声を春と思はむ

歌の意味
花さえもまだ咲いていないのだから、鴬の鳴くひと声を春のしるしと思うことにしよう。
鑑賞
巻第一 春歌上 36

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 花もまだ咲かない早春に、鴬のひと声を春のしるしとして受け止めようと詠んだ歌である。目に見える春のしるしがまだないなかで、耳から春を感じ取ろうとする心が表れている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「花だにも」の「だに」は、〜さえの意で、花さえも、と春のしるしの乏しさを示す。
 二句「まだ咲かなくに」の「なくに」は理由を表し、まだ咲かないのだから、の意である。前歌の第三十五首では鴬が人を花のもとへ誘ったのに対し、本歌ではまだ花がなく、鴬の声だけが春を告げている。
 三句「鴬の」は、本巻の第三十三首から続く鴬の歌の締めくくりにあたる。
 四句「鳴く一声を」は、鴬のただひと声を示し、わずかなしるしに春を見いだそうとしている。
 結句「春と思はむ」の「む」は意志を表し、そのひと声を春と思うことにしよう、の意である。

ひとこゑ:ひと声、一度鳴く声
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
鴬の鳴きつる声に誘はれて 花のもとにぞ我は来にける
次の歌
君がため山田の沢にゑぐ摘むと 濡れにし袖は今も乾かず