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あやしくも厭ふにはゆる心かな
いかにしてかは思ひ絶ゆべき

歌の意味
不思議なことに、相手に嫌われれば嫌われるほど、かえって募っていく心であることよ。どのようにして、この思いを断ち切ればよいのだろうか。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 996

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 不思議なことに、嫌われるほどかえって募っていく心であることよ、どのようにしてこの思いを断ち切ればよいのだろうか、と詠む歌である。拒まれるほど思いが強くなるという恋心の不条理を見つめ、思い切ることのできない苦しさを詠んでいる。

 初句「あやしくも」は、不思議なことに、の意である。本巻の第九百九十一首の四句「あやしく目にも」と、同じ語を共有している。
 二句「厭ふにはゆる」は、嫌われるほどにかえって勢いづく、の意で、「はゆ」は、引き立つ、いっそう盛んになる、の意である。
 三句「心かな」は、心であることよ、の意で、「かな」は詠嘆を表す。ここで句切れとなる。
 四句「いかにしてかは」は、どのようにして、の意で、係助詞「かは」が結句と係り結びをなしている。
 結句「思ひ絶ゆべき」は、思いを断ち切ることができるだろうか、の意で、推量の助動詞「べし」の連体形「べき」で四句の「かは」を受けて結んでいる。

いとふ:厭ふ。嫌う、避ける
はゆ:映ゆ。引き立つ、いっそう盛んになる
おもひたゆ:思ひ絶ゆ。思いを断ち切る、あきらめる
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
我ばかり我を思はむ人もがな さてもや憂きと世を試みん
次の歌
思ふこと成すこそ神の難からめ しばし忘るる心つけなん