君がため山田の沢にゑぐ摘むと
濡れにし袖は今も乾かず
- 歌の意味
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あなたのために山の田の沢でえぐを摘もうとして濡れた袖は、今もまだ乾かない。
- 鑑賞
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巻第一 春歌上 37
詞書は前の歌に続き「題しらず」
愛しい人のために山田の沢でえぐを摘み、そのとき濡れた袖が今も乾かないと詠んだ歌である。乾かない袖に、相手を思って流す涙や、尽くしても報われない思いを重ねていると読める。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
万葉集巻十に「君がため山田の沢にゑぐ摘むと雪消の水に裳の裾濡れぬ」という類歌がある。
初句「君がため」は、あなたのために、の意で、相手への献身を示す。
二句「山田の沢に」は、山あいの田のそばの沢を示す。
三句「ゑぐ摘むと」は、早春の沢に生える草であるえぐを摘もうとして、の意である。本巻の第五首から続いた若菜摘みの歌々と同じく、春の野の摘み草を詠んでいる。
四句「濡れにし袖は」は、えぐを摘むときに沢の水で濡れた袖を示す。
結句「今も乾かず」は、今もまだ乾かない、の意で、袖が乾かないほど涙に暮れていることをほのめかしている。
ゑぐ:早春の沢に生える草、黒慈姑とも芹ともいう
やまだ:山あいにある田
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
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花だにもまだ咲かなくに鴬の 鳴く一声を春と思はむ
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梅の花今は盛りになりぬらん 頼めし人のおとづれもせぬ