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消え果てて止みぬばかりか年を経て
君をおもひのしるしなければ

歌の意味
火が消えるように、すっかり消え果てて終わってしまうばかりなのだろうか。年月を経てあなたを思い続けてきても、その思いの火のかいがないので。
鑑賞
巻第九 恋歌一 517

詞書「女につかはしける」
 何年もあなたを思い続けてもそのかいがないので、火が消えるように私も消え果ててしまうばかりなのか、と詠んだ歌である。報われない恋の思いを「思ひ」の「火」になぞらえ、命も尽きそうな嘆きを訴えている。
 詞書によれば、女のもとへ送った歌である。次歌は女の返歌で、二首は贈答の一組となっている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「消え果てて」は、すっかり消えてしまって、の意で、命が尽きることをいう。「消え」は四句の「おもひ」の「火」の縁語である。
 二句「止みぬばかりか」は、終わってしまうばかりなのか、の意で、ここで句切れとなる。本巻の第五百三十四首の結句「止みぬばかりか」と同じ語である。
 三句「年を経て」は、何年もたって、の意である。
 四句「君をおもひの」の「おもひ」は、「思ひ」と「火」を掛けた掛詞である。次歌の初句「おもひだに」がこれを受けている。
 結句「しるしなければ」は、かいがないので、の意で、二句の理由を倒置して示している。

おもひ:「思ひ」の意と「火」を掛ける
しるし:効果、かい
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
思ひやる心は常に通へども 逢坂の関越えずもあるかな
次の歌
おもひだにしるしなしてふ我が身にぞ 逢はぬなげきの数はもえける