古典和歌stream

巻向の檜原の霞たちかへり
かくこそは見め飽かぬ君かな

歌の意味
巻向の檜原にくり返し霞が立つように、くり返しこのようにして逢いたいものだ。いくら見ても見飽きることのないあなたであることよ。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 816

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 巻向の檜原に霞が立ち返るように、くり返しこうしてあなたに逢いたい、見飽きることのないあなただと詠む歌である。上の句の春霞の景が序詞となり、何度逢っても飽き足りない恋人への思いを詠んでいる。

 初句「巻向の」は、大和の歌枕の巻向の、の意である。
 二句「檜原の霞」は、檜の生い茂る原に立つ霞の、の意である。次歌の第八百十七首の三句「霞みつつ」と、春の霞を共有している。
 三句「たちかへり」は、霞が「立ち」と、くり返しの意の「立ち返り」を掛ける掛詞である。初句から二句までが序詞となる。
 四句「かくこそは見め」は、このようにして逢いたい、の意で、係助詞「こそ」を受けて「見め」と已然形で結んでいる。
 結句「飽かぬ君かな」は、見飽きることのないあなたであることよ、の意で、「かな」は詠嘆を表す。

まきもく:巻向。大和の地名。歌枕
ひはら:檜原。檜の生い茂る原
たちかへる:霞が「立つ」意と、くり返しの意の「立ち返る」を掛ける
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
いづ方によるとかは見む青柳の いと定めなき人の心を
次の歌
眺めやる山辺はいとど霞みつつ おぼつかなさのまさる春かな