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まどろまぬものからうたてしかすがに
うつつにもあらぬ心地のみする

歌の意味
うとうと眠っているわけでもないのに、困ったことに、そうはいってもやはり、現実とも思えない心地ばかりがする。
鑑賞
巻第十二 恋歌四 877

詞書「いと忍びてまかり歩きて」
 眠っていたわけでもないのに、困ったことに現実とも思えない心地ばかりがする、と詠んだ歌である。ひそかな逢瀬の後、目覚めていたのに夢のようで現実感がないという、恋の高揚と戸惑いを詠んでいる。
 詞書によれば、ごく人目を忍んで出かけて行ったときの歌である。次歌の第八百七十八首はこれに対する返しで、二首で贈答となっている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「まどろまぬ」は、うとうと眠らない、の意である。
 二句「ものからうたて」は、のに、困ったことに、の意で、「ものから」は逆接、「うたて」は、いやなことに、の意である。
 三句「しかすがに」は、そうはいってもやはり、の意である。
 四句「うつつにもあらぬ」は、現実とも思えない、の意で、八音の字余りとなっている。次歌の第八百七十八首は初句と二句で「うつつにもあらぬ」をそのまま受けている。
 結句「心地のみする」は、心地ばかりがする、の意で、「のみ」は限定を表す。

まどろむ:うとうと眠る
うつつ:現実
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
思ひ出でておとづれしける山彦の 答へに懲りぬ心なになり
次の歌
うつつにもあらぬ心は夢なれや 見てもはかなきものを思へば