おもひだにしるしなしてふ我が身にぞ
逢はぬなげきの数はもえける
- 歌の意味
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思いの火さえかいがないとあなたは言うが、わが身にこそ、逢えない嘆きの投げ木が数多く燃えていることだ。
- 鑑賞
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巻第九 恋歌一 518
詞書「返し」
思いの火のかいがないと言うあなたよりも、私の身にこそ逢えない嘆きが数多く燃えている、と詠んだ歌である。前歌の「思ひ」の「火」を受けて、嘆きを薪の「投げ木」に掛け、自分の苦しみのほうがまさると切り返している。
前歌への返歌である。前歌の「おもひ」「しるしなければ」を受けて、「おもひだにしるしなし」と返している。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「おもひだに」の「おもひ」は、「思ひ」と「火」を掛けた掛詞で、前歌の四句を受けている。「だに」は、さえ、の意である。
二句「しるしなしてふ」は、かいがないという、の意で、前歌の結句「しるしなければ」を受けている。
三句「我が身にぞ」は、私の身にこそ、の意で、「ぞ」は強めの係助詞である。
四句「逢はぬなげきの」の「なげき」は、「嘆き」と、火にくべる薪の「投げ木」を掛けた掛詞である。
結句「数はもえける」は、数多く燃えていることだ、の意で、三句の「ぞ」を受けて連体形「ける」で結ぶ係り結びとなっている。「もえ」は「火」と「投げ木」の縁語である。
おもひ:「思ひ」の意と「火」を掛ける
なげき:「嘆き」の意と、薪の「投げ木」を掛ける
もゆ:燃える
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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消え果てて止みぬばかりか年を経て 君をおもひのしるしなければ
- 次の歌
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干しがてに濡れぬべきかな唐衣 乾くたもとの世々になければ