干しがてに濡れぬべきかな唐衣
乾くたもとの世々になければ
- 歌の意味
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干すこともできずに、濡れてしまうにちがいない。この唐衣は、乾く袂が、いつの世にもないのだから。
- 鑑賞
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巻第九 恋歌一 519
詞書「題しらず」
涙に濡れた唐衣の袂は乾く時がないので、干すこともできずに濡れ続けるにちがいない、と詠んだ歌である。絶えず流れる恋の涙を、乾くことのない袂によって表している。
恋の涙で袖が濡れるという趣向で、袂の乾く世はないと言い切ることで、恋の嘆きが尽きないことを示している。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「干しがてに」は、干すことができずに、の意である。
二句「濡れぬべきかな」は、濡れてしまうにちがいないことだ、の意で、ここで句切れとなる。
三句「唐衣」は、美しい衣、の意で、本来は唐風の衣服をいう。
四句「乾くたもとの」は、乾く袂が、の意である。本巻の第五百六十二首の三句「乾かぬは」も、涙に濡れた袖の乾かないことを詠んでいる。
結句「世々になければ」は、いつの世にもないので、の意で、二句の理由を倒置して示している。
からころも:唐風の美しい衣、衣の美称
たもと:袖、袖の下の袋のようになった部分
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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おもひだにしるしなしてふ我が身にぞ 逢はぬなげきの数はもえける
- 次の歌
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世とともにあふくま川の遠ければ 底なる影を見ぬぞわびしき