忘るなよほどは雲居に成りぬとも
空行く月の巡り逢ふまで
- 歌の意味
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忘れないでおくれ。二人の隔たりが雲のかなたほどに遠くなっても、空を行く月が再びめぐって来るように、また巡り会うその時まで。
- 鑑賞
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巻第八 雑歌上 470
詞書「橘忠幹が人の娘に忍びて物言ひ侍りける頃、遠き所にまかり侍るとて、この女のもとに言ひ遣はしける」
隔たりが雲のかなたほど遠くなっても、空を行く月がめぐるように再び会う日まで忘れないでほしいと詠む歌である。詞書から、橘忠幹が人目を忍んで通っていた女のもとへ、遠国へ下る際に送った歌とわかる。空をめぐって再び戻ってくる月に、再会の約束を託している。原文の作者表記はよみ人しらずであるが、詞書からは橘忠幹の歌と読める。
この歌は伊勢物語にも、遠くへ旅立つ男が女に送った歌として見え、後世の文学にもたびたび引かれた。本巻の第四百三十七首の「雲居」の月が身近な月であったのに対し、この歌は遠く隔たってもめぐり会う月を詠んでいる。
初句「忘るなよ」は、忘れないでおくれ、の意で、「な」は禁止、「よ」は呼びかけの終助詞である。ここで句切れとなる。
二句「ほどは雲居に」は、隔たりは雲のかなたほどに、の意で、雲居は遠く離れた所をいう。
三句「成りぬとも」は、なってしまっても、の意で、「とも」は逆接の仮定を表す。
四句「空行く月の」は、空を渡って行く月が、の意で、月の運行に再会を重ねている。
結句「巡り逢ふまで」は、再びめぐって会う時まで、の意で、初句「忘るなよ」へと返って、倒置によって願いの期限を示している。
ほど:距離。隔たり
めぐりあふ:月がめぐって再び現れるように、再び会う
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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拾遺和歌集
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今日までと見るに涙のますかがみ 馴れにし影を人に語るな
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年月は昔にあらず成りゆけど 恋しきことは変はらざりけり