古典和歌stream

逢ふことはながめふる屋の板びさし
さすがにかけて年の経ぬらむ

歌の意味
逢うことはないまま、長雨の降る古い家の板廂の下で物思いにふけっているが、それでもやはり心にかけたまま、年が過ぎてしまったのだろう。
鑑賞
巻第八 恋歌下 504

 逢うことはないまま、長雨の降る古びた家の板廂の下で物思いにふけりながら、それでもやはりあの人を心にかけて年月が過ぎてしまったのだろう、と詠む歌である。眺めと長雨、降ると古る、廂を差しかけると心にかけるを重ね、待ち続けて年を経る嘆きを表している。
 本巻の第四百三十六首、第四百四十九首と同じく、廂を詠み込んで逢えない恋を嘆く歌である。

 初句「逢ふことは」は、恋人に逢うことはの意である。
 二句「ながめふる屋の」の「ながめ」は、物思いにふけって眺める意の「眺め」と、「長雨」とを掛け、「ふる」は、雨が「降る」意と、家が「古る」意とを掛けており、いずれも平仮名のままとした。
 三句「板びさし」は、板で葺いた廂の意で、四句の「さす」「かけ」と縁語をなしている。
 四句「さすがにかけて」は、それでもやはり心にかけての意で、廂を差し掛ける意を響かせている。
 結句「年の経ぬらむ」は、年が過ぎてしまったのだろうの意で、完了の「ぬ」に現在推量の「らむ」が付いている。

ながめ:物思いにふけって眺める「眺め」と、「長雨」を掛ける
ふる:雨が「降る」意と、家が「古る」意を掛ける
いたびさし:板で葺いた廂
かく:心に「かく」意と、廂を「掛く」意を響かせる
作者
よみ人しらず
出典
金葉和歌集
前の歌
近江にかありといふなるかれひ山 君は越えけり人と寝くさし
次の歌
かしかまし山の下行くさざれ水 あなかま我も思ふ心あり