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寝ぬる夜のかへさわかしく見えしかど
我が違ふれば事なかりけり

歌の意味
寝た夜の夢の中では、帰り道がよくないように見えたけれど、私が夢違えをしたので、何事もなかったことだ。
鑑賞
巻第九 雑歌上 573

 寝た夜の夢では悪いことが起こりそうに見えたけれど、私が夢違えをしたので何事もなかった、と詠む歌である。悪い夢を見たときに、まじないによってその災いを避ける夢違えの風習を踏まえ、夢違えのおかげで無事だったことを詠んでいる。
 二句「かへさわかしく」の語義には定説を見ないが、帰り道の夢見が悪かったことをいうとみられる。

 初句「寝ぬる夜の」は、寝た夜のの意で、完了の「ぬ」の連体形が用いられている。夜に見た夢をいう。
 二句「かへさわかしく」は、語義に定説を見ないが、「かへさ」は帰り道の意で、帰り道の様子が不吉に見えたことをいうとみられる。
 三句「見えしかど」は、見えたけれどの意で、過去の「き」の已然形に逆接の「ど」が付いている。
 四句「我が違ふれば」は、私が夢違えをしたのでの意で、「違ふ」は悪い夢の災いをまじないによって避けることをいう。
 結句「事なかりけり」は、何事もなかったことだの意で、詠嘆の「けり」で、無事であった安堵を込めて結んでいる。

かへさ:帰り道、帰る途中
たがふ:悪い夢の災いをまじないによって避ける。夢違え
作者
よみ人しらず
出典
金葉和歌集
前の歌
身の憂さも問ふ一言に塞かれつつ こころつくしの道はとまりぬ
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日陰にはなき名立ちけり小忌衣 着て見よとこそ言ふべかりけれ