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住吉の松に立ち寄る白浪の
かへる折にや音は泣かるらむ

歌の意味
住吉の松のもとに寄せてくる白波が返っていくように、門から帰されるこの折には、声をあげて泣けてくるのだろうか。
鑑賞
巻第十 恋歌二 661

詞書「相知りて侍りける人を、久しう訪はずしてまかりたりければ、門より返しつかはしけるに」
 住吉の松に寄せる白波が返っていくように、門から帰されるこの折には、声をあげて泣けてくるのか、と詠んだ歌である。久しぶりに訪ねながら門前で帰された嘆きを、寄せては返す白波に重ねている。
 詞書によれば、親しくしていた人を長く訪れずにいて、出かけて行ったところ、門から帰されたときに詠んだ歌である。前歌の第六百六十首に続き、訪ねたのに帰される嘆きを詠んでいる。
 作者の壬生忠岑は、古今和歌集の撰者の一人である。三十六歌仙の一人で、小倉百人一首には「有明のつれなく見えし別れより」の歌が採られている。

 初句「住吉の」は、摂津の国の歌枕である住吉の、の意である。
 二句「松に立ち寄る」は、松のもとに寄せてくる、の意で、訪ねて行ったことを重ねている。
 三句「白浪の」は、白波が、の意で、初句から三句までが四句の「かへる」を導く序詞となっている。
 四句「かへる折にや」の「かへる」は、波が「返る」意と、作者が「帰る」意を掛けた掛詞である。「や」は疑問の係助詞である。前歌の結句「返す」と響き合っている。
 結句「音は泣かるらむ」は、声をあげて泣けてくるのだろうか、の意で、「音」には波の音を響かせている。四句の「や」を受けて連体形「らむ」で結ぶ係り結びとなっている。

かへる:波が「返る」意と、「帰る」意を掛ける
ねになく:声を上げて泣く
作者
壬生忠岑
出典
後撰和歌集
前の歌
うらみても身こそつらけれ唐衣 きていたづらに返すと思へば
次の歌
思はむと頼めし事もあるものを なき名を立ててただに忘れね