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禊する川瀬にさ夜や更けぬらん
帰る袂に秋風ぞ吹く

歌の意味
禊をする川瀬で、夜もすっかり更けてしまったのだろうか。禊を終えて帰ってゆく袂に、秋風が吹いている。
鑑賞
巻第三 夏歌 225

詞書「六月祓をよめる」
 「六月祓」を題として詠んだ歌である。六月祓の禊をしている川瀬で、いつの間にか夜もすっかり更けてしまったのだろうか、禊を終えて帰る袂には、もう秋風が吹いている、と詠む。水無月の晦日の夜が更け、日付が改まって秋が来たことを、袂に吹く秋風によって感じ取り、夏の巻を結んでいる。
 作者は明らかでなく、よみ人しらずとして収められている。
 本巻は、巻頭の第百三十六首が春の衣を夏衣に脱ぎかえる袂を詠んで始まり、巻末の本歌が秋風の吹く袂を詠んで終わる。夏の始まりと終わりとが、袂に感じる季節の移りによって呼応している。

 初句「禊する」は、六月祓の禊をする、の意である。本巻の第二百二十三首、第二百二十四首に続いて禊を詠む。
 二句「川瀬にさ夜や」の「さ夜」の「さ」は接頭語で、夜をいう。「や」は疑問の係助詞で、三句の「らん」と係り結びをなす。
 三句「更けぬらん」の「ぬ」は完了、「らん」は現在推量の助動詞の連体形で、更けてしまったのだろうか、の意である。ここで句切れとなる。
 四句「帰る袂に」は、禊を終えて帰る袂に、の意である。巻頭の第百三十六首「花のたもとに」と呼応し、袂に始まった夏の巻が袂で結ばれる。
 結句「秋風ぞ吹く」の「ぞ」は係助詞で、「吹く」と連体形で結ぶ。夏の終わりと秋の訪れを秋風で示す。本巻の第二百七首、第二百二十首の秋風を受け、夏の巻の最後に秋風が吹く。

みそぎ:水で身を清めて罪や穢れを祓うこと
かはせ:川の浅瀬
さよ:夜
作者
よみ人しらず
出典
千載和歌集
前の歌
いつとても惜しくやはあらぬ年月を 禊に捨つる夏の暮かな
次の歌
秋来ぬと聞きつるからに我が宿の 荻の葉風の吹きかはるらん