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くる事は常ならずとも玉鬘
頼みは絶えじと思ふ心あり

歌の意味
訪ねて来ることはいつもというわけではなくても、玉鬘のつるが長く続くように、あなたを頼みとする思いは絶えるまいと思う心がある。
鑑賞
巻第十四 恋歌六 1001

詞書「男のまうで来て、好き事をのみしければ、人やいかが見るらんとて」
 訪ねて来るのはいつもではなくても、頼みに思う気持ちは絶えないと思う心がある、と詠んだ歌である。葛のつるを繰るように訪れは途切れがちでも、相手を頼みとする心は長く絶えることがないと誓っている。
 詞書によれば、男が訪ねて来ては色めいたことばかりするので、人がどう見るだろうかと案じた折の歌で、次歌の第千二首に返しが置かれている。前の贈答の糸に続き、本歌は葛のつるに寄せて「絶え」を詠んでいる。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「くる事は」は、訪ねて来ることは、の意で、「くる」に「来る」と、つるを「繰る」意を掛け、三句の「玉鬘」と縁語になっている。
 二句「常ならずとも」は、いつもではなくても、の意で、「とも」は逆接の仮定を表す。
 三句「玉鬘」は、つる草の美称で、つるが長く延びることから「絶ゆ」にかかる枕詞である。次歌の初句にも置かれている。
 四句「頼みは絶えじと」は、頼みは絶えないだろうと、の意で、「じ」は打消しの推量の助動詞である。八音の字余りとなっている。
 結句「思ふ心あり」は、思う心がある、の意で、変わらぬ誠意を述べて結んでいる。

くる:来る意と、つるを繰る意を掛ける
たまかづら:つる草の美称
すきごと:色めいた振る舞い
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
へつるより薄くなりにし賤機の 糸は絶えてもかひやなからん
次の歌
玉鬘頼めくる日の数はあれど 絶え絶えにてはかひなかりけり