秋来ぬと聞きつるからに我が宿の
荻の葉風の吹きかはるらん
- 歌の意味
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秋が来たと聞いたとたんに、わが家の荻の葉を吹く風が、早くも吹き変わったのだろうか。
- 鑑賞
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巻第四 秋歌上 226
詞書「秋立つ日よみ侍りける」
立秋の日に詠んだ歌である。今日から秋だと聞いたそのときから、わが家の荻の葉を吹く風の音が変わったように聞こえる、風が早くも秋の風に吹き変わったのだろうか、と詠む。暦の上の立秋を耳で聞いた知らせと、荻の葉ずれという耳で聞く風の音とを重ね、目には見えない秋の訪れを音によってとらえている。秋歌上の巻頭を飾る一首である。
作者の「侍従乳母」は侍従と呼ばれた乳母の女房であるが、詳しい伝は明らかでない。
古今和歌集の藤原敏行の歌「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」以来、立秋は目に見えず風の音で知るものとして詠まれてきた。本歌もその伝統の上にあり、次歌の第二百二十七首はこの敏行の歌を直接に踏まえる。巻第三の巻末の第二百二十五首が袂に吹く秋風で夏を結んだのを受け、本巻は荻に吹く秋風で幕を開ける。
初句「秋来ぬと」の「ぬ」は完了の助動詞で、秋が来た、の意である。立秋を告げる言葉を示す。次歌の第二百二十七首、本巻の第二百四十五首も同じ初句を置き、立秋の知らせを詠む。
二句「聞きつるからに」の「つる」は完了の助動詞「つ」の連体形、「からに」は、〜するとすぐに、の意である。秋が来たと聞いたとたんに、と、知らせと変化の間の短さを強調する。
三句「我が宿の」は、わが家の、の意で、身近な庭の荻であることを示す。本巻の巻末の第三百一首は「旅寝の床」を詠み、巻頭の「我が宿」と対をなして本巻を結んでいる。
四句「荻の葉風の」の「荻」は水辺に生えるイネ科の草で、葉ずれの音が秋の訪れを告げるものとして詠まれた。本巻の第二百三十首「荻吹く風」、第二百三十三首「荻の上風」も荻に吹く風を詠む。
結句「吹きかはるらん」の「らん」は現在推量の助動詞「らむ」で、吹き変わったのだろうか、と目の前の変化の原因を推し量る。
をぎ:水辺に生えるイネ科の多年草で、葉ずれの音が秋の訪れを告げるものとして詠まれた
はかぜ:草木の葉を吹き渡る風
ふきかはる:風の吹き方や音が変わる
- 作者
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侍従乳母
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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禊する川瀬にさ夜や更けぬらん 帰る袂に秋風ぞ吹く
- 次の歌
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浅茅生の露けくもあるか秋来ぬと 目にはさやかに見えけるものを