みなかみに祈るかひなく涙川
うきても人をよそに見るかな
- 歌の意味
-
水の神に祈ったかいもなく、涙の川に浮かぶようにつらい思いをしても、あの人をよそながら見るばかりであることよ。
- 鑑賞
-
巻第九 恋歌一 585
詞書「女のもとにつかはしける」
水の神に祈ったかいもなく、涙の川に浮かびながらつらい思いをしても、あの人をよそに見るばかりだと詠んだ歌である。祈りも届かず、涙に暮れながら遠くから相手を見るしかない嘆きを表している。
詞書によれば、女のもとへ送った歌である。次歌は女の返歌で、二首は贈答の一組となっている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「みなかみに」の「みなかみ」は、川の上流の「水上」と、「水神」を掛けた掛詞である。次歌の二句「みなかみさへぞ」がこれを受けている。
二句「祈るかひなく」は、祈ったかいもなく、の意である。
三句「涙川」は、流れる涙を川にたとえた語で、初句の「みなかみ」の縁語である。
四句「うきても人を」の「うき」は、涙川に「浮き」と、つらい意の「憂き」を掛けた掛詞である。
結句「よそに見るかな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、よそながら見るばかりであることよ、の意である。
みなかみ:川の上流の「水上」と、「水神」を掛ける
なみだがは:流れる涙を川にたとえた語
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
わたつ海に深き心のなかりせば 何かは君をうらみしもせん
- 次の歌
-
祈りけるみなかみさへぞ恨めしき 今日より外に影の見えねば