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祈りけるみなかみさへぞ恨めしき
今日より外に影の見えねば

歌の意味
あなたが祈ったという水の神までもが恨めしい。今日のほかには、あなたの姿が映って見えないのだから。
鑑賞
巻第九 恋歌一 586

詞書「返し」
 あなたが祈ったという水の神までも恨めしい、今日のほかには姿を見せないのだから、と詠んだ歌である。前歌で祈りのかいがないと嘆いた男に対し、訪れのまれな男をなじり返している。
 前歌への返歌である。前歌の「みなかみに祈る」を受けて「祈りけるみなかみ」と返し、「よそに見る」に対して「影の見えねば」と答えている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「祈りける」は、あなたが祈ったという、の意で、前歌の二句「祈るかひなく」を受けている。
 二句「みなかみさへぞ」の「みなかみ」は、「水上」と「水神」を掛けた掛詞で、前歌の初句を受けている。「さへ」は、までも、の意である。
 三句「恨めしき」は、恨めしい、の意で、二句の「ぞ」を受けて連体形で結ぶ係り結びとなっている。ここで句切れとなる。
 四句「今日より外に」は、今日のほかには、の意である。
 結句「影の見えねば」は、姿が映って見えないので、の意で、「影」は水の縁語である。前歌の結句「よそに見る」を受けている。

みなかみ:川の上流の「水上」と、「水神」を掛ける
かげ:水に映る姿、面影
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
みなかみに祈るかひなく涙川 うきても人をよそに見るかな
次の歌
色深く染めし袂のいとどしく 涙にさへも濃さまさるかな