人知れずもの思ふころの我が袖は
秋の草葉におとらざりけり
- 歌の意味
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人知れず物思いに沈んでいるこの頃の私の袖は、露に濡れる秋の草葉に劣らず、涙で濡れていることだ。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌五 901
詞書「桂のみこに住みはじめけるあひだに、かのみこあひ思はぬけしきなりければ」
人知れず物思いに沈むこの頃の私の袖は、秋の草葉に劣らず濡れている、と詠んだ歌である。露に濡れる秋の草葉に涙で濡れる袖を重ね、思いの通じない恋の悲しみを詠んでいる。
詞書によれば、桂のみこのもとに通いはじめたころ、みこが自分を思ってくれない様子だったので詠んだ歌である。桂のみこは宇多天皇の皇女孚子内親王とされる。前歌に続き秋の景物に寄せた歌で、露に濡れる草葉は前の第八百九十三首、第八百九十四首の露とも響き合っている。
作者の「さだかずのみこ」は貞数親王である。清和天皇の皇子で、舞にすぐれたことでも知られる。
初句「人知れず」は、人に知られないように、の意で、ひそかな恋であることを示している。
二句「もの思ふころの」は、物思いに沈むこの頃の、の意で、八音の字余りとなっている。
三句「我が袖は」は、私の袖は、の意で、涙に濡れる袖を表している。
四句「秋の草葉に」は、秋の草の葉に、の意で、露に濡れた草葉を指している。
結句「おとらざりけり」は、劣らないことだ、の意で、袖の濡れようが草葉の露に劣らないことを、「けり」の詠嘆で示している。
くさば:草の葉
- 作者
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貞数親王
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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言ふからにつらさぞまさる秋の夜の 草の戸ざしにさはるべしやは
- 次の歌
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賤機に思ひ乱れて秋の夜の 明くるも知らず嘆きつるかな