古典和歌stream

言ふからにつらさぞまさる秋の夜の
草の戸ざしにさはるべしやは

歌の意味
そう言われるだけに、かえってつらさがまさる。本当に思っているのなら、秋の夜の草の戸の閉ざしくらいに、さえぎられるはずがあろうか。
鑑賞
巻第十三 恋歌五 900

詞書「返し」
 そう言われるとかえってつらさがまさる、秋の夜の草の戸ざしくらいにさえぎられるはずがあろうか、と詠んだ歌である。戸を開けなかったことを恨む男に対し、本当に思うならその程度の戸で引き返すはずがないと、逆に男の思いの浅さを責めている。
 前歌の第八百九十九首への返歌である。前歌の「秋の夜の草の戸ざし」の句をそのまま用い、閉ざした側と閉め出された側が向き合う構図となっている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「言ふからに」は、そう言うとすぐに、言うだけに、の意である。
 二句「つらさぞまさる」は、つらさがまさる、の意で、「ぞ」は強めの係助詞で、連体形「まさる」で結ぶ係り結びとなっている。ここで句切れとなる。
 三句「秋の夜の」は、秋の夜の、の意で、前歌の初句と同じ句である。
 四句「草の戸ざしに」は、草の戸を閉ざしたことに、の意で、前歌の二句を受けている。
 結句「さはるべしやは」は、さえぎられるはずがあろうか、いやない、の意で、「やは」は反語を表している。

とざし:戸を閉ざすこと
さはる:さえぎられる、妨げられる
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
秋の夜の草の戸ざしのわびしきは あくれどあけぬものにぞありける
次の歌
人知れずもの思ふころの我が袖は 秋の草葉におとらざりけり