古典和歌stream

木の葉だに色づくほどはあるものを
秋風吹けば散る涙かな

歌の意味
木の葉でさえ色づくまでには時間がかかるというのに、私の涙は、秋風が吹くとすぐに散り落ちることだ。
鑑賞
巻第四 秋歌上 231

詞書は前の歌に続き「初秋の心をよめる」
 前歌と同じく「初秋」の心を詠んだ歌である。木の葉でさえ紅葉して散るまでには色づくだけの時間があるというのに、私の涙は、秋風が吹くとたちまち散り落ちる、と詠む。木の葉と涙とを比べ、秋の訪れとともにすぐさま湧き上がる悲しみの深さを表している。
 作者は明らかでなく、よみ人しらずとして収められている。
 本巻はここまで風や露で秋の訪れを詠んできたが、本歌は秋風によって散る涙を詠み、秋の哀れを人の心の側から示している。

 初句「木の葉だに」の「だに」は、〜でさえ、の意で、軽いものを挙げて重いものを類推させる。
 二句「色づくほどは」は、紅葉して色づくまでの時間は、の意である。
 三句「あるものを」の「ものを」は逆接で、あるというのに、の意となる。
 四句「秋風吹けば」は、已然形に「ば」が付いた確定条件で、秋風が吹くと、の意である。前歌の第二百三十首の荻吹く風を受け、秋風を詠む。
 結句「散る涙かな」の「かな」は詠嘆の終助詞である。木の葉が「散る」ことを涙にも用い、葉より先に涙が散ると詠む。

いろづく:草木の葉が紅葉して色が変わる
作者
よみ人しらず
出典
千載和歌集
前の歌
秋は来ぬ年も半ばに過ぎぬとや 荻吹く風のおどろかすらん
次の歌
神山の松吹く風も今日よりは 色は変はらで音ぞ身にしむ