なげきさへ春を知るこそわびしけれ
もゆとは人に見えぬものから
- 歌の意味
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嘆きまでが、木が春を知って芽吹くように募っていくのはつらいことだ。思いが燃えているとは、あの人には見えないものなのに。
- 鑑賞
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巻第二 春歌中 65
詞書「弥生の朔日ごろに、女につかはしける」
春になると木々が芽吹くように、嘆きまでもが春を知って募っていくのがつらい、それでいて燃える思いは相手には見えないと、報われない恋の苦しさを訴えた歌である。「なげき」と「もゆ」に木と春の景物を重ね、恋の嘆きを季節に託している。
詞書によれば、三月の初めごろ、女のもとに贈ったものである。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。
初句「なげきさへ」の「なげき」は、「嘆き」と、薪にする木の「投げ木」を掛けた掛詞である。木が春に芽吹くように、嘆きまでもが、という意を表す。本巻の第五十五首や次歌の第六十六首にも同じ掛詞が用いられている。
二句「春を知るこそ」は、春を知って芽吹くことを示し、「こそ」は係助詞として三句の已然形「わびしけれ」と係り結びをなす。
三句「わびしけれ」は、つらく心細い、の意で、「こそ」を受けて已然形で結ぶ。ここで句切れとなる。
四句「もゆとは人に」の「もゆ」は、木の芽が「萌ゆ」意と、思いが「燃ゆ」意を掛けた掛詞で、「投げ木」の縁語となっている。
結句「見えぬものから」の「ものから」は逆接で、相手には見えないものなのに、と嘆きを深めている。
なげき:「嘆き」と、薪にする木の「投げ木」を掛ける
もゆ:芽が出る意の「萌ゆ」と、思いが「燃ゆ」を掛ける
やよひ:陰暦三月
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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大空に覆ふばかりの袖もがな 春咲く花を風にまかせじ
- 次の歌
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もえ渡るなげきは春のさがなれば おほかたにこそあはれとも見れ