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大空に覆ふばかりの袖もがな
春咲く花を風にまかせじ

歌の意味
大空を覆うほどの大きな袖があればよいのに。そうすれば、春に咲く花を風の吹くままにはさせないだろう。
鑑賞
巻第二 春歌中 64

詞書「題しらず」
 大空を覆うほどの袖があれば、春の花を風に散らさせはしないのにと願った歌である。途方もない大きさの袖を思い描く誇張によって、花を惜しむ心の深さを表している。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。

 初句「大空に」は、空いっぱいに、の意で、途方もない広がりを示す。
 二句「覆ふばかりの」の「ばかり」は程度を表し、覆うほどの、の意である。
 三句「袖もがな」の「もがな」は願望を表し、そのような袖があればよいのに、の意である。ここで句切れとなる。
 四句「春咲く花を」は、春に咲く花、ここでは桜を示す。
 結句「風にまかせじ」の「じ」は打消の意志で、風の思うままにはさせまい、の意である。本巻の第五十六首や第五十七首と同じく、花と風を取り合わせている。

まかす:相手の思うままにさせる
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
立ち渡る霞のみかは山高み 見ゆる桜の色も一つを
次の歌
なげきさへ春を知るこそわびしけれ もゆとは人に見えぬものから