恋しくは影をだに見て慰めよ
我がうちとけて忍ぶ顔なり
- 歌の意味
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恋しいのなら、せめてこの姿絵だけでも見て心を慰めなさい。これは私がくつろいで、あなたを偲んでいる顔なのだ。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌五 909
詞書「一条がもとに、いとなん恋しきと言ひにやりたりければ、鬼の形を描きてやるとて」
恋しいのならせめて姿絵だけでも見て慰めなさい、これは私がくつろいであなたを偲ぶ顔なのだ、と詠んだ歌である。鬼の絵を自分の顔だと言って送るおどけた趣向で、相手の恋しいという言葉に冗談めかして応えている。
詞書によれば、一条のもとへ「とても恋しい」と言ってやったところ、一条が鬼の姿を描いて送るときに添えた歌である。次歌の第九百十首は伊勢の返しで、恋しいと言い送ったのは伊勢であったことがわかる。「影」の語を共有して贈答をなしている。
作者の一条は、伊勢と親しく歌を交わした女房で、詳しい伝は未詳である。
初句「恋しくは」は、恋しいのならば、の意である。
二句「影をだに見て」は、せめて姿だけでも見て、の意で、「影」は姿、ここでは描いた絵姿をいう。「だに」は最小限を示す副助詞である。
三句「慰めよ」は、心を慰めなさい、の意で、ここで句切れとなる。
四句「我がうちとけて」は、私がくつろいで、の意で、鬼の絵を自分のくつろいだ顔と言いなす戯れである。
結句「忍ぶ顔なり」は、あなたを偲んでいる顔である、の意で、「なり」は断定の助動詞である。
かげ:姿、またその姿を写した絵
うちとく:くつろぐ、打ち解ける
しのぶ:恋しく思い出す、偲ぶ
- 作者
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一条
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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伊勢の海人と君しなりなば同じくは 恋しきほどにみるめ刈らせよ
- 次の歌
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影見ればいとど心ぞまどはるる 近からぬけの疎きなりけり