憎からぬ人の着せけんぬれぎぬは
おもひにあへず今乾きなん
- 歌の意味
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あなたが憎からず思う人が着せたという濡れ衣ならば、私の思いの火に耐えきれず、今にも乾いてしまうことだろう。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌五 956
詞書「返し」
あなたが憎からず思う人が着せた濡れ衣ならば、私の思いの火に耐えきれず今にも乾くだろう、と詠んだ歌である。夫の濡れ衣という言い訳に対し、それは相手の女が着せたものだろうから、自分の嫉妬の火で乾いてしまうと皮肉を込めて返している。
前歌の第九百五十五首への返歌である。前歌の「ぬれぎぬ」と「干る」を受け、乾く手立てがないと言う夫に、思いの火ですぐ乾くと答えており、濡れることと乾くことが反転した構図となっている。
作者の中将内侍は、小野好古の妻で、内侍として仕えた女官である。詳しい伝は未詳である。
初句「憎からぬ」は、憎くはない、の意で、夫が好ましく思う相手の女を指している。
二句「人の着せけん」は、人が着せたという、の意で、「けん」は過去の伝聞や推量を表す助動詞「けむ」である。
三句「ぬれぎぬは」は、濡れ衣は、の意で、前歌の四句の語を受けている。
四句「おもひにあへず」は、思いの火に耐えきれず、の意で、「おもひ」の「ひ」に「火」を掛け、嫉妬の思いを火にたとえている。
結句「今乾きなん」は、今にも乾いてしまうだろう、の意で、「なん」は完了の助動詞「ぬ」に推量の助動詞「む」が付いた形である。前歌の「干るよしもなし」に答えている。
ぬれぎぬ:「濡れた衣」と、無実の罪の意を掛ける
おもひ:「思ひ」の「ひ」に「火」を掛ける
あふ:耐える、こらえきる
- 作者
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中将内侍
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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目も見えず涙の雨のしぐるれば 身のぬれぎぬは干るよしもなし
- 次の歌
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おほかたは瀬とだにかけじ天の川 深き心を淵と頼まむ