おほかたは瀬とだにかけじ天の川
深き心を淵と頼まむ
- 歌の意味
-
およそ浅い瀬などとは口にもするまい、天の川よ。あなたの深い心を、深い淵として頼みにしよう。
- 鑑賞
-
巻第十三 恋歌五 957
詞書「題しらず」
およそ瀬などとは口にもするまい、天の川よ、あなたの深い心を淵として頼みにしよう、と詠んだ歌である。七夕の二星が年に一度しか渡らない天の川の瀬にはこだわらず、相手の深い心を深い淵のように頼みにしたいと詠んでいる。
次歌の第九百五十八首に返しが置かれ、瀬と淵と天の川の語を受けて贈答をなしている。淵と瀬は本巻の第九百四十六首、第九百四十七首の涙川とも共通しており、涙川から天の川へと川の歌が続いている。
作者の小野道風は、小野篁の孫で、小野葛絃の子である。書の名手として知られ、藤原佐理、藤原行成とともに三蹟の一人に数えられる。
初句「おほかたは」は、およそ、だいたい、の意である。
二句「瀬とだにかけじ」は、瀬とさえ口にするまい、の意で、「かけ」は言葉に出す意、「じ」は打消しの意志を表す。浅い瀬を浅い心にたとえている。
三句「天の川」は、天の川よ、の意で、七夕の二星の逢瀬をふまえている。ここで句切れとなる。
四句「深き心を」は、深い心を、の意である。
結句「淵と頼まむ」は、淵として頼みにしよう、の意で、「む」は意志の助動詞である。二句の「瀬」と対をなしている。
かく:言葉に出して言う、口にかける
ふち:川の水の深い所
- 作者
-
小野道風
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
憎からぬ人の着せけんぬれぎぬは おもひにあへず今乾きなん
- 次の歌
-
淵とても頼みやはする天の川 年に一度渡るてふ瀬を